
不動産購入において、重要事項説明書の確認は契約前の最重要ステップです。
筆者も初めてマンションを購入した際、専門用語だらけの説明書に圧倒され、何を確認すべきか分からず不安でした。
本記事では、不動産取引のプロが実際に使用している10個のチェックポイントを、具体例とともに分かりやすく解説します。
結論から言うと、重要事項説明書は「物件情報」「取引条件」「特約事項」の3つに注目すれば理解できます。 ただし、各項目の詳細を知らなければ、後悔する契約になりかねません。
重要事項説明書とは?トラブル事例から学ぶ重要性

重要事項説明書は、宅地建物取引業法第35条で定められた法的義務です。 宅地建物取引士が買主に対して、物件の重要な情報を契約前に説明する書類となります。
公益財団法人不動産流通推進センターの調査によると、不動産取引における紛争相談の第1位は「重要事項説明の不備」となっています。
実際に起きたトラブル事例
事例1:登記情報の見落とし 東京都内でマンションを購入したAさんは、重要事項説明を聞き流してしまいました。 実は売主の共有者全員の同意が取れておらず、契約後に所有権移転ができないトラブルに発展。 結果的に違約金200万円を支払うことになりました。
事例2:インフラ未整備による追加費用 神奈川県で中古戸建てを購入したBさんは、下水道が未整備であることを見逃していました。 引き渡し後に下水道工事費用150万円が必要となり、予算を大幅に超過する事態に。
「不動産会社は『下水道は使えます』と言っていたけど、まさか浄化槽から公共下水道への切り替え工事が必要だとは…。重要事項説明書にはちゃんと書いてありました」(30代女性・神奈川県)
引用:e戸建て|口コミ掲示板より
私もそうでしたが、重要事項説明を受ける際は緊張してしまい、内容が頭に入らないことがあります。 だからこそ事前準備が大切なのです。
物件情報で必ず確認すべき5つのチェックポイント

物件情報は重要事項説明書の中核部分です。 以下の5つのポイントは、契約前に必ず確認しましょう。
①登記情報と売主の一致確認
最新の登記簿謄本と売主情報が完全に一致しているか確認することが最重要です。
確認すべき項目は3つあります。 ・所有者の氏名(法人の場合は名称) ・共有者がいる場合は全員の記載 ・相続登記が完了しているか
特に共有物件の場合、共有者全員の同意が必要となります。 1人でも反対者がいれば売買契約は成立しません。
日本司法書士会連合会の調査では、相続登記未了の不動産は全国で約410万筆に上ります。
関連記事:[相続登記の義務化とは?2024年4月から始まる新制度を解説]
②抵当権の抹消時期
中古物件では、住宅ローンの抵当権が設定されているケースがほとんどです。
「引き渡しまでに抵当権を抹消する」という記載があるか必ず確認しましょう。
抹消時期が曖昧な場合は、以下を明確にしてください。 ・具体的な抹消予定日 ・抹消費用の負担者(通常は売主負担) ・抹消できなかった場合の対応
私も中古マンション購入時に抵当権の確認を怠り、引き渡しが2週間遅れた経験があります。 幸い違約金は発生しませんでしたが、引っ越し業者の再手配など余計な手間がかかりました。
③法令上の制限(用途地域・建ぺい率)
土地の利用には様々な法的制限があります。
用途地域建ぺい率容積率高さ制限第一種低層住居専用地域30~60%50~200%10mまたは12m第一種中高層住居専用地域30~60%100~500%なし第一種住居地域50~80%100~500%なし商業地域80%200~1300%なし
建ぺい率60%、容積率200%などの数値も必ず確認してください。
将来の増改築を考えている場合、現在の建物が既に制限いっぱいだと増築できません。
引用:国土交通省|用途地域
④インフラ整備状況
生活に欠かせないインフラの整備状況は、追加費用に直結する重要項目です。
確認すべきインフラは以下の4つです。 ・上水道(公営水道か井戸水か) ・下水道(公共下水道か浄化槽か) ・都市ガス(都市ガスかプロパンガスか) ・電気(引き込み工事の要否)
特に下水道が未整備の場合、100万円以上の工事費用が必要になることがあります。
私の知人も田舎の中古住宅を購入した際、浄化槽の交換に80万円かかったそうです。 事前に確認していれば、売主との交渉材料にできたはずです。
⑤災害リスク(ハザードマップ)
2020年8月から水害ハザードマップの説明が義務化されました。
確認すべき災害リスクは以下の通りです。 ・洪水浸水想定区域(想定浸水深) ・土砂災害警戒区域 ・津波災害警戒区域 ・液状化リスク
ハザードマップで「浸水深3.0m」と記載されていれば、2階まで浸水する可能性があります。
関連記事:[ハザードマップの見方と活用法|災害リスクを事前にチェック]
取引条件の重要チェックポイント3選

取引条件は金銭面に直結する重要な項目です。 見落としやすい3つのポイントを解説します。
⑥売買代金以外の諸費用
物件価格以外にも様々な費用が発生します。
固定資産税は日割り計算で精算されるため、具体的な金額を確認しましょう。
マンションの場合は以下も精算対象です。 ・管理費(月額15,000円など) ・修繕積立金(月額20,000円など) ・駐車場代(月額30,000円など)
引き渡し日が月の途中の場合、日割り計算の起算日も確認が必要です。
⑦契約解除と違約金
契約解除の条件は、万が一に備えて必ず理解しておくべき項目です。
一般的な違約金は売買代金の10~20%に設定されています。 3,000万円の物件なら、300~600万円の違約金が発生する計算です。
住宅ローン特約の期限は特に重要です。
「契約から30日以内」などの期限が設定されており、期限内にローン審査が通らなければ、違約金なしで契約解除できます。
私も住宅ローンの本審査で減額回答があり、ローン特約で契約解除した経験があります。 特約がなければ大きな損失になるところでした。
⑧契約不適合責任の範囲
2020年4月の民法改正で、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されました。
売主が負う責任の範囲と期間を明確に確認しましょう。 一般的には「引き渡しから3か月以内」などの期間制限があります。
中古物件では「現状有姿」という特約で、売主の責任を免除するケースがあります。
マンション購入時の追加確認事項2つ

マンション特有の確認事項があります。 戸建てにはない重要なポイントを2つ解説します。
⑨修繕積立金と管理状況
マンションの資産価値を左右する最重要項目です。
修繕積立金の総額が1億円以上あるか確認しましょう。
50戸のマンションなら、1戸あたり200万円以上の積立があれば健全です。 積立金が少ない場合、大規模修繕時に一時金徴収のリスクがあります。
引用:国土交通省|マンションの修繕積立金に関するガイドライン
関連記事:[マンション管理組合の基礎知識|理事になったらやるべきこと]
⑩管理規約の使用制限
マンションでは管理規約により様々な制限があります。
確認すべき主な制限事項は以下の通りです。 ・ペット飼育(小型犬のみ可など) ・楽器演奏(時間制限あり) ・リフォーム(フローリング禁止など) ・民泊利用(禁止が多い)
特にペット飼育は、後から変更できない重要事項です。
まとめ:重要事項説明で後悔しないための準備

重要事項説明書の確認は、不動産購入の成否を左右する重要なステップです。 事前に書類のコピーをもらい、分からない用語は調べておきましょう。
当日は遠慮せずに質問することが大切です。 私もそうでしたが、「こんなこと聞いていいのかな」と思わず、積極的に確認しましょう。
次のステップは、信頼できる不動産会社選びです。 重要事項説明を丁寧に行う会社こそ、安心して取引できるパートナーとなります。
関連記事:[信頼できる不動産会社の選び方|失敗しない5つのポイント]
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