不動産売却の流れは、相場調査から始まり、不動産会社への査定依頼、物件調査、媒介契約、売却活動、売買契約を経て、引き渡しまで全部で7つのステップがあります。この記事では基本的な流れを図解で説明し、各段階での注意点や必要な期間、発生する費用などについても詳しく解説します。これから土地、一戸建て、マンションなどの不動産売却を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 不動産売却の7ステップの全体像と各段階での具体的な流れ
- 不動産売却にかかる期間は平均で5〜6か月程度
- 不動産売却を成功させるカギは、早めの査定依頼と信頼できる不動産会社選び
1. 不動産売却の全体的な流れ図解
不動産の売却を決めてから引き渡しまで、不動産売却の手順は大きく7つのステップに分かれています。
- 相場調査
- 不動産会社への査定依頼
- 物件調査
- 媒介契約締結
- 売却活動
- 買主との売買契約
- 買主への引き渡し
一般的に、不動産売却にかかる期間はおよそ5〜6か月とされています。
以下の表で、各ステップにかかる期間の目安を見てみましょう。
不動産売却のステップ | 期間の目安 |
1. 相場調査 | 約2週間〜1か月 |
2. 査定依頼 | ↑に含む |
3. 物件調査 | ↑に含む |
4. 媒介契約締結 | ↑に含む |
5. 売却活動 | 約3か月 |
6. 売買契約 | 約1〜2か月 |
7. 引き渡し | ↑に含む |
全体 | 約5〜6か月 |
これはあくまで目安であり、買い手がなかなか見つからない場合や、値引き交渉で時間がかかってしまうこともあります。余裕をもったスケジュールで不動産売却を進めることをおすすめします。
2. 相場調査でスタートする不動産売却
不動産売却の第一歩は、物件の相場を知ることです。不動産会社に査定を依頼する前に、インターネットなどで大まかな相場を把握しておきましょう。相場に合った適正価格で売り出すことが、成功への近道となります。
不動産の売却相場を調べられるサイトは主に2つあります。
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
都道府県から地図を選んで不動産取引価格を調べられます。おおまかな相場把握ができ、公示地価も確認できるメリットがあります。 - 不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
市区町村名から成約価格をもとにした取引情報を検索できます。築年数や成約時期、駅からの距離など、条件による検索が可能です。自分の物件に近い成約事例から相場を調べられる点が大きな利点です。
土地の価格については、相場の指標が少し異なりますので、専門サイトなどで詳しく調べるとよいでしょう。
不動産売買時における適正価格設定の重要性
不動産売却では、最初の価格設定が非常に重要です。高すぎる価格設定は買い手が付きにくく、売却期間が長引く原因になります。また、長期間売れ残ると「何か問題のある物件なのでは?」と疑われるリスクも。逆に安すぎる設定では損をしてしまいます。相場を把握した上で、不動産会社のアドバイスも参考に、適切な価格設定を心がけましょう。
3. 複数社への一括査定依頼のメリット
相場を把握したら、次は不動産会社に査定を依頼します。査定は基本的に無料で行われ、仮に価格に納得がいかなくても契約する必要はありません。
一括査定の活用で時間と労力を節約
いざ不動産会社に依頼しようとして「どの不動産会社を選べばよいのか分からない」と悩む方は少なくありません。そんなときに便利なのが、ネットから1回の申し込みで複数社に査定依頼を出せる「不動産一括査定サイト」です。
一括査定のメリット
- 複数社の査定額を比較でき、適正価格が把握できる
- 売却に強い不動産会社と出会える可能性が高まる
- 家にいながら申し込めて、時間はわずか1分程度
自分で足や電話を使って不動産会社に一社ずつ連絡を取るのは、想像以上に時間と労力がかかります。高く早く売るためにも、同時に複数社を比較できる一括査定サイトの利用はとても重要です。
訪問査定と机上査定の違い
不動産会社による査定方法には、主に訪問査定と机上査定の2種類があります。
査定方法 | 訪問査定 | 机上査定 |
算出方法 | データに加え、実際に物件を訪問して算出 | 築年数・面積・所在地などのデータから算出 |
精度 | 査定価格が売却価格に近く、精度が高い | 訪問査定より精度は劣る |
所要期間 | 1〜2週間程度 | 即日〜5日程度 |
訪問査定のメリットは精度が高いこと、机上査定のメリットは訪問不要で期間が短いことです。本格的な売却を考えている場合は、精度の高い訪問査定を受けることをおすすめします。
査定時に必要な書類
机上査定、訪問査定に関わらず、査定には以下のような書類が必要です。査定依頼を出す前に、あらかじめ準備しておきましょう。
戸建ての場合に必要な書類
- 登記事項証明書
- 土地の実測図
- 土地の境界が確認できる資料
- 越境の覚書(あれば)
- 建物の設計図書
- 建築確認申請書および建築確認済証
- 検査済証
マンションの場合に必要な書類
- 分譲時のパンフレット
- 管理規約
- 使用細則
不動産売却会社の数と選び方
現在、全国の不動産会社は35万社以上あると言われています。そのうち不動産売買を許された会社は約13万社(37%)。さらにその中で、実際に売却実績があり、不動産売却を「得意」としている会社はかなり限られます。
不動産売却に強い会社は看板からは分かりにくいものです。一括査定サイトは、不動産売却に強い会社だけを選りすぐっているため、査定額の算出だけでなく、不動産会社選びのツールとしても活用できます。
4. 物件調査で正確な価格設定を
「3. 査定依頼」の項目では、机上査定と訪問査定をご紹介しましたが、不動産売却を本格的に進める場合は、訪問査定をおすすめします。なぜなら、売却を進める場合、訪問による物件調査は必ず通らなければならない道だからです。
物件調査では、不動産会社の担当者が以下の事項を確認します。
- 土地の状況
- 建物の状態
- 権利関係
- 法律関係
- インフラ設備
- 管理状態
- 周辺環境
- 所有者からのヒアリング
訪問しての現地確認・書面確認のほか、役所や法務局などに出向いての調査も行われます。日当たりや眺望などのメリットに加え、近隣に騒音や臭いを発する施設があるなどのデメリットも正直に伝え、より正確な査定価格を算出してもらうことが大切です。
ここで注意したいのは、査定額は不動産会社によって異なるということです。そのため、複数社に一括で査定依頼し、査定額や対応を比較検討することが重要になります。訪問査定を受けたからといって、必ずしもその会社と契約する必要はないので、積極的に査定を依頼し、価格と対応を比較しましょう。
5. 媒介契約の種類と選び方
媒介契約とは、不動産会社と不動産の売主が締結する、売買のための契約です。媒介契約には3種類あり、それぞれ特徴が異なります。
媒介契約の種類 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
複数社との契約 | 不可 | 不可 | 可能 |
売主自ら買主を見つける | 不可 | 可能 | 可能 |
売却状況報告の頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 法令上の定めなし |
レインズへの登録義務 | 5日以内 | 7日以内 | 法令上の定めなし |
契約期間 | 3か月以内 | 3か月以内 | 定めなし |
専属専任媒介契約は売主の行動に制限がありますが、不動産会社が最も積極的に売却活動を行ってくれるというメリットがあります。
レインズ(不動産流通機構)への登録は、不動産業界全体に物件情報が周知されるため、買主が見つかる可能性が高まります。不動産売却を成功させるためには、このレインズへの登録が重要なポイントになります。
どの媒介契約を選ぶかは、自分の状況や希望に合わせて決めるとよいでしょう。急いで売りたい場合は専属専任や専任媒介契約、自分でも買主を探したい場合は専任媒介や一般媒介契約がおすすめです。
6. 効果的な売却活動の進め方
媒介契約を結んだ不動産会社は、売主とやりとりをしながら、以下の流れで売却活動を進めていきます。
①販売戦略の立案
話し合いをもとに、不動産会社が過去の成約事例に沿って、最適な販売戦略を提案してくれます。
- 売却理由を伝え、販売方針を決める
住み替え、相続、不要物件の処分などの理由により「早く売る」「期限を決めて売る」などの販売方針を相談します。 - 物件のアピールポイントを明確にする
部屋の特徴や地域、周辺環境、住み心地、想定されるターゲット層などを明確にし、物件の「売り」を見極めます。
②効果的な広告展開
販売戦略に沿って、不動産会社がさまざまな媒体で広告を出します。
- 不動産情報サイトへの掲載
- 自社サイトへの掲載
- 顧客へのDM送付
- 住宅情報誌への掲載
- チラシのポスティング
- 店頭での物件情報掲示
③内覧対応の準備
広告を見た内覧希望者が物件を訪問します。内覧に訪れた人の購買意欲が高まるよう、以下の準備を進めましょう。
- 部屋の整理整頓
- 掃除
- お客様用のスリッパ準備
入念な内覧準備をしておくと、不動産売却の成功率を高められます。部屋が明るく清潔に見えるよう、カーテンを開けて明るくしたり、気になる臭いを消したりするのも効果的です。
不動産売却におけるホームステージング効果
最近注目されている「ホームステージング」は、売り出し中の物件を家具や小物でコーディネートし、購入検討者が「住みたい」と思える空間作りをする手法です。
家具やインテリアの配置を工夫するだけで、部屋の印象は大きく変わります。プロに依頼する方法もありますが、自分でできる簡単なホームステージングとして、観葉植物を置く、清潔感のあるタオルをバスルームに用意する、壁の小さな傷を補修するなどの工夫も効果的です。ホームステージングを取り入れた物件は売却期間が短縮されるケースが多いと言われています。
7. 買主との売買契約締結
買主が決まったら、売買契約日を設定します。売買契約日には、売主・買主が不動産会社などに集まり、以下の流れで契約を結びます。
- 不動産会社から重要事項説明を受ける
- 売主・買主が、売買契約書に署名捺印する
- 買主が売主に手付金を支払う
宅地建物取引士(多くの場合は、資格を持つ不動産会社担当者)が買主へ「重要事項説明書」を交付します。重要事項説明書には、売買代金の支払い方法や契約を解除するときの規定などが記載されています。
重要事項説明のあと、売買契約書に売主、買主が署名捺印をします。売買契約が成立すると、売主は買主から売買代金の10%程度の手付金を受け取るのが一般的です。残金は引き渡し時に支払われます。
なお、不動産会社には売買契約成立時に仲介手数料の50%、引き渡し時に残りの50%を支払うのが一般的です。
不動産売却での仲介手数料計算方法
不動産売却における仲介手数料には、法律で上限額が定められています。
- 売買価格200万円以下の部分:5%+消費税
- 売買価格200万円超400万円以下の部分:4%+消費税
- 売買価格400万円超の部分:3%+消費税
例えば、3,000万円の物件を売却した場合の仲介手数料は (200万円×5%)+(200万円×4%)+(2,600万円×3%)=96万円 これに消費税10%を加えると105.6万円となります。
不動産会社によっては割引を行っているところもあるので、複数社に確認するとよいでしょう。
8. 引き渡し手続きと必要書類
引き渡し日には、売主と買主、不動産会社の担当者、司法書士らが金融機関などに集まり、代金の決済や登記の移転手続きを行います。引き渡しの流れは以下の通りです。
- 登記関連書類の確認
- 買主によるローンの実行
- 残金の受け取り
- 仲介手数料(残額)の支払い
- 抵当権抹消と所有権移転の登記手続き
- 鍵・書類の引き渡し
不動産登記の手続き
引き渡し時には以下の登記手続きが必要で、通常は司法書士が担当します。
- 抵当権抹消手続き(費用は売主負担、1〜2万円が目安)
- 所有権移転手続き(費用は買主負担、3〜10万円が目安)
売却物件に住宅ローンが残っている場合は、売主がローンを精算して抵当権を抹消した後、所有権を買主に移転します。
鍵・書類の引き渡し
すべての支払いと手続きが終了したら、売主から買主へ所有権が移転します。このタイミングで鍵と以下のような関連書類を引き渡します。
- 新築時の図面一式
- 販売時のパンフレット
- 建築確認通知書
- 設備のパンフレットや説明書
- マンションの場合は組合規約
- 物件に関するすべての鍵
鍵を渡す前に、電気・ガス・水道などの公共料金の精算も済ませておきましょう。これですべての手続きが完了し、不動産売却が正式に完了します。
不動産売却時にかかる諸費用
不動産売却には様々な費用がかかります。主な費用は以下の通りです。
- 仲介手数料:売却価格の3〜5%+消費税
- 印紙税:売買契約書に貼付(売却価格により1,000円〜6万円)
- 抵当権抹消登記費用:司法書士報酬1〜2万円程度
- 住民税・固定資産税の精算金:日割り計算で清算
- 譲渡所得税:売却益に対して課税(所有期間により税率が異なる)
これらの費用を考慮した上で、手取り額を計算しておくことが大切です。特に譲渡所得税については、特例措置などもあるので、税理士に相談するとよいでしょう。
まとめ:不動産売却成功のカギ
不動産売却をスムーズに行うには、7つのステップのうち特に以下の2つが大切です。
- STEP2:一括査定を依頼する
- STEP5:売却活動を効果的に行う
最も時間を要するのが売却活動であり、売却活動にはパートナーとなる不動産会社の存在が必要不可欠です。そのため、一括査定サイトなどを使い、信頼できる不動産会社を見つけることが重要です。
不動産売却に必要な書類や費用に関しては、初めての方には複雑に思えるかもしれませんが、不動産会社に相談しながら進めれば問題ありません。まずは無料査定などを利用し、不動産売却に向けて早めに一歩踏み出すことが大切です。
不動産売却は人生の中でも大きな取引です。この記事で紹介した7つのステップを参考に、慎重かつ効率的に進めていただければ幸いです。
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